このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「月のひかり」です。

月のひかりはお屋根から、

 

明るい街をのぞきます。

 

なにも知らない人たちは、

 

ひるまのやうに、たのしげに、

 

明るい街をあるきます。

 

月のひかりはそれを見て、

 

そつとためいきついてから、

 

誰も貰はぬ、たくさんの、

 

影を瓦にすててます。

 

それも知らない人たちは、

 

あかりの川のまちすぢを、

 

魚のやうに、とほります。

  

ひと足ごとに、濃く、うすく、

  

伸びてはちぢむ、氣まぐれな、

  

電燈のかげを曵きながら。

 

 

月のひかりはみつけます、

 

暗いさみしい裏町を。

 

いそいでさつと飛び込んで、

 

そこのまづしいみなし兒が、

 

おどろいて眼をあげたとき、

 

その眼のなかへもはいります。

  

ちつとも痛くないやうに、

  

そして、そこらの破(あば)ら屋が、

  

銀の、御殿にみえるよに。

 

子供はやがてねむつても、

 

月のひかりは夜あけまで、

 

しづかにそこに佇つてます。

  

これは荷ぐるま、やぶれ傘、

 

 一本はえた草にまで、

 

 かはらぬ影をやりながら。

 

(月のひかり:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

夜のお月さまはいろいろな場所を照らします。

 

ホッとするのは貧しい家庭を照らす時。

 

月のやさしさがにじみ出ていてせつない詩です。

 

鈴木 澪

 

 

長い詩です。うたいやすくまとめるのに苦労しました。

 

月はみすゞさんの大切な大切なよりどころですね。

 

大西 進