このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「しあはせ」です。
桃いろお衣(べべ)のしあはせが、
ひとりしくしく泣いてゐた。
夜更けて雨戸をたたいても、
誰も知らない、さびしさに、
のぞけば、暗い灯のかげに、
やつれた母さん、病気の子。
かなしく次のかどに立ち、
またそのさきの戸をたたき、
町中まはつてみたけれど、
誰もいれてはくれないと、
月の夜ふけの裏町で、
ひとりしくしく泣いてゐた。
(しあはせ:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
世の中には、不幸なひとのなんと多いことか、
桃色のしあわせはそれが悲しくて
泣いているのでしょう。
みんながもっと幸せになって、
身も心も明るいももいろになってくれる
ことが願いなのです。
いつの世も「しあはせさん」が
満足できるような時代にはならないものです。
悲しいけれど……。
みすゞさんも心から願っていたことなのでしょう。
世界の平和、みんなの幸せを!!
鈴木 澪
桃色おべべの女の子、きれいなおべべで
幸せそうに見えるけど一人ぼっちで、
さびしくて夜更けに町をさまよって。
どこかにあたたかくむかえてくれるところはないかと、
家から家をまわります。
けれど、このさびしさはうめられず、
月夜の裏通りでつい涙がこぼれました。
大西 進