このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「老楓」です。
年とつた庭の楓に
十一月のお日さまは
ときが來たよ、といひました。
年とつた庭の楓は
うつうつと晝寢してゐて
色づくことを忘れました。
新建ちのお倉の屋根が高いから
十一月のお日さまは
ちらとのぞいたきりでした。
年とつた庭の楓の
青い葉は青いまんまで
しづかに散つてゆきました。
(老楓:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
お年寄りに寄せる優しい思い。
お年寄りの楓だったら、
色づくことを忘れることもあるのですね。
人間も年をとるとうっかりしたり、
いろいろと不自由なものです。
若いみすゞさんは多方面に心配りをすることのできる、
人のことを親身になって考えることの
できる人だったのですね。
鈴木 澪
みんな秋には紅葉するのに
陽かげのかえでは色づきません。
人に気づかれない一枚の葉っぱに、
いっぱいの心を寄せるみすゞさん。
ふと涙がこぼれます。
私も……、と共感しているようで……。
こんな風に自分をみる瞬間があるのかと。
大西 進