去年のけふは今ごろは、
私は積木をしてました。
積木の城はがらがらと、
見るまに崩れて散りました。
去年のけふの、夕方は、
芝生のうへに居りました。
黒い火事雲こはいけど、
母さんお瞳(めめ)がありました。
去年のけふが暮れてから、
せんのお家は燒けました。
あの日届いた洋服も、
積木の城も燒けました。
去年のけふの夜更けて、
火の色映る雲の間に
しろい月かげ見たときも、
母さん抱いてて呉れました。
お衣(べべ)もみんなあたらしい、
お家もとうに建つたけど、
あの日の母さんかへらない。
今年はさびしくなりました。
(去年のけふ:金子みすゞ)
関東大震災に想うみすゞさんの心は、大好きなお母さんを亡くした
子供たちの代弁者となって悲しみをたたえています。
災害はいつ自分の身に起こるか分かりません。そんな突然の悲しみ
も詩にすると、なぜか叙情的な絵になっています。
鈴木 澪
明日もぜひ見て下さいね。
(更新は午前中の予定)