このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「柘榴の葉と蟻」です。
柘榴の葉つぱに蟻がゐた。
柘榴の葉つぱは廣かつた、
青くて、日陰で、その上に、
葉つぱは靜かにしてやつた。
けれども蟻は、うつくしい、
花をしたうて旅に出た。
花までゆくみち遠かつた、
葉つぱはだまつてそれ見てた。
花のふちまで來たときに、
柘榴の花は散つちやつた、
しめつた黒い庭土に。
葉つぱはだまつてそれ見てた。
子供がその花ひィろつて、
蟻のゐるのも知らないで、
握つて駈けて行つちやつた。
葉つぱはだまつてそれ見てた。
(柘榴の葉と蟻:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
ありとざくろの葉は大きく、
花まではとても遠くて、
かなり苦労してきたのに、
着いた時には花は散ってしまった。
人生にどことなく似ていますね。
ざくろの葉の様子は心を打ちます。
鈴木 澪
あまいあまいざくろ、
ありはよく知っていて集まってくる。
けれど求めるものは遠い、
けど思い直してまた歩きはじめる人生。
それを見まもっているのは神でしょうか。
大西 進