このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「失なつたもの」です。
夏の渚でなくなつた、
おもちやの舟は、あの舟は、
おもちやの島へかへつたの。
月のひかりのふるなかを、
なんきん玉の渚まで。
いつか、ゆびきりしたけれど、
あれきり逢はぬ豊ちやんは、
そらのおくにへかへつたの。
蓮華のはなのふるなかを、
天童たちにまもられて。
そして、ゆふべの、トランプの、
おひげのこはい王さまは、
トランプのお國へかへつたの。
ちらちら雪のふるなかを、
おくにの兵士にまもられて。
失くなつたものはみんなみんな、
もとのお家へかへるのよ。
(失くなつたもの:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
みすゞさんの見つけた考えは
実に正しいと思います。
なくなったと思ったものは
本当はなくなったのではなく、
元の所へ帰っていったんですね。
安心しました。
鈴木 澪
先きの詩では本物の舟でした。
今の話はおもちゃ。
みすゞさんの頭の中が見える気がしますね。
現実からふと空想の世界へ
とびだすのがみすゞさんです。
見事な転換ですね。
人も宇宙からうまれ、
また宇宙へ帰るのでしょうか、
みすゞさんはそう言ってます。
大西 進