このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「羽蒲團」です。
あつたかさうな羽蒲團、
誰にやろ、
表でねむる犬にやろ。
「私よりか」と犬がいふ。
「うらのお山の一つ松、
ひとりで風を受けてます。」
「私よりか」と松がいふ。
「野原でねむる枯れ草は、
霜のおべべを着てゐます。」
「私よりか」と草がいふ。
「お池にねむる鴨の子は、
氷の蒲團しいてます。」
「私よりか」と鴨がいふ。
「雪のお藏のお星さま、
よつぴてふるへてゐられます。」
あつたかさうな、羽蒲團、
誰にやろ、
やつぱし私が着てねよよ。
(羽蒲團:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
あたたかそうな羽根布団。
自分よりかふさわしいのは……と、
ゆずり合っているうちに、ちゃっかりみすゞさん、
羽根布団を自分のものに……。
ユーモアたっぷり、女の子の感性ですね。
鈴木 澪
いつも向かい合うものにやさしいみすゞの私。
おやおや、この詩はめずらしい。
さいごは私がもらっちゃう。
しかし、よく読むと、みんなのやさしさが
伝わって「思いやり」のリンクだな。
やさしさいっぱい、うれしいうたです。
大西 進