このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「鯨捕り」です。
海の鳴る夜は
冬の夜は、
栗を燒き燒き
聽きました。
むかし、むかしの鯨捕り、
ここのこの海、紫津が浦。
海は荒海、時季は冬、
風に狂ふは雪の花、
雪と飛び交ふ銛の縄。
岩も礫(こいし)もむらさきの、
常に水さへむらさきの、
岸さへ朱(あけ)に染むといふ。
厚いどてらの重ね着で、
舟の舳(みよし)に見て立つて、
鯨弱ればたちまちに、
ぱつと脱ぎすて素つ裸、
さかまく波にをどり込む、
むかし、むかしの漁夫(れふし)たち──
きいてる胸も
をどります。
いまは鯨は寄らぬ、
浦は貧乏になりました。
海は鳴ります。
冬の夜を、
おはなしすむと、
氣がつくと──
(鯨捕り:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
くじら捕りのお話は心踊るお話です。
くじらが捕れなくなった今も、
海は相変らず鳴っています。
鈴木 澪
生活のためとはいえ、
こんなきけんですごい漁があったなんて、
よくぞ伝えてくれました。
みすゞを唄う合唱団の女声たちが、
もっとも心ひかれる「くじらとり」。
でも、時は移り、
世界中でくじらをどうするか、
熱いギロンがありますね。
大西 進